司法書士は法律に関連した仕事をする国家資格者です。国家資格である司法書士の仕事については司法書士法という法律で定められています。しかし、司法書士に認められる業務が増大していることもあって、司法書士法の条文を見ても、何が司法書士の仕事なのか非常に分かりづらくなっています。

そこで、司法書士法に定められた司法書士の業務について、できるだけ簡単に解説してみたいと思います。なお、「司法書士法第3条(業務)」の全文は、この記事の最後に掲載しています。

主な司法書士の業務

1.登記に関する手続の代理

主な登記には、不動産登記、商業登記があります。

不動産登記には、相続、贈与、売買、財産分与などによる名義変更(所有権移転登記)、住宅ローンを借りる際の担保(抵当権)の設定登記、返済し終わったときの抵当権抹消登記、また、住所や氏名が変わったときの所有権登記名義人住所(氏名)変更登記など様々なものがあります。

商業登記とは、主に会社(株式会社、合同会社、特例有限会社)の登記のことです。株式会社は設立登記をすることによって誕生します。その後も、本店移転、会社の目的変更、増資、減資、合併、解散・・・など様々な場面で登記が必要となります。司法書士はこれらの登記のスペシャリストです。

裁判所若しくは検察庁に提出する書類の作成

裁判所、または検察庁に提出する書類の作成としては、裁判所に提出する訴状・答弁書、調停の申立書や、検察庁に提出する告訴状・告発状などがあります。

裁判を起こすという場合、まず頭に思い浮かぶのは弁護士でしょう。けれども、司法書士に書類作成を依頼し、司法書士のサポートを受けながらご自身で裁判所手続をすることもできるのです。

裁判所で行う手続としては、訴訟以外にも、家庭裁判所での相続関連(遺産分割調停、相続放棄)や遺言関連(遺言書検認)の手続、また、離婚調停等もありますが、これらの申立て書類作成も司法書士の仕事です。

また、司法書士は、個人の多重債務者の方についての自己破産や、民事再生手続の申立書作成も行っています。これも、司法書士の主要業務のある裁判所提出書類作成の一つです。

簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟・民事調停、裁判外和解の代理

「簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟・民事調停、裁判外和解の代理」は、平成14年の司法書士法改正により新たに加わった業務であり、法律専門家としての司法書士にとって画期的なものです。

これにより、簡易裁判所における訴訟や調停においては、司法書士が訴訟代理人として、弁護士と同等の訴訟活動ができることになったのです。

さらには、「簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟(中略)及びこれらに関する相談」とあることから、訴訟等についての相談、つまり法律相談が司法書士の業務として認められたのです。

司法書士に簡裁訴訟代理権が認められるまでは、法律相談を受けることができたのは弁護士だけでした。司法書士がすることが出来たのは、登記相談など、限定された業務についての相談だけです。

したがって、法律家といえば弁護士のみを指す言葉だったのですが、そこに「簡易裁判所における訴額140万円以下の」との但し書きは付くにせよ、もう一つの法律家として司法書士が加わったのです。

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司法書士法第3条(業務)

第1項  司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

1  登記又は供託に関する手続について代理すること。

2  法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第4号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。

3  法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。

4  裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成16年法律第123号)第6章第2節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第8号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。

5  前各号の事務について相談に応ずること。

6  簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。

イ  民事訴訟法 (平成8年法律第109号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であって、訴訟の目的の価額が裁判所法 (昭和22年法律第59号)第33条第1項第1号に定める額を超えないもの

ロ  民事訴訟法第275条 の規定による和解の手続又は同法第7編の規定による支払督促の手続であって、請求の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの

ハ  民事訴訟法第2編第4章第7節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第91号)の規定による手続であって、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの

ニ  民事調停法(昭和26年法律第222号)の規定による手続であって、調停を求める事項の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの

ホ  民事執行法(昭和54年法律第4号)第2章第2節第4款第2目の規定による少額訴訟債権執行の手続であって、請求の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの

7  民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であって紛争の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。

8  筆界特定の手続であって対象土地(不動産登記法第123条第3号 規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の2分の1に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。

第2項  前項第6号から第8号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。

1  簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。

2  前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。

3  司法書士会の会員であること。

第3項  法務大臣は、次のいずれにも該当するものと認められる研修についてのみ前項第1号の指定をするものとする。

1  研修の内容が、簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力の習得に十分なものとして法務省令で定める基準を満たすものであること。

2  研修の実施に関する計画が、その適正かつ確実な実施のために適切なものであること。

3  研修を実施する法人が、前号の計画を適正かつ確実に遂行するに足りる専門的能力及び経理的基礎を有するものであること。

第4項  法務大臣は、第2項第1号の研修の適正かつ確実な実施を確保するために必要な限度において、当該研修を実施する法人に対し、当該研修に関して、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又は必要な命令をすることができる。

第5項  司法書士は、第2項第2号の規定による認定を受けようとするときは、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。

第6項  第2項に規定する司法書士は、民事訴訟法第54条第1項本文(民事保全法第7条又は民事執行法第20条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、第1項第6号イからハまで又はホに掲げる手続における訴訟代理人又は代理人となることができる。

第7項  第2項に規定する司法書士であって第1項第6号イ及びロに掲げる手続において訴訟代理人になつたものは、民事訴訟法第55条第1項の規定にかかわらず、委任を受けた事件について、強制執行に関する訴訟行為をすることができない。ただし、第2項に規定する司法書士であって第1項第6号イに掲げる手続のうち少額訴訟の手続において訴訟代理人になつたものが同号ホに掲げる手続についてする訴訟行為については、この限りでない。

第8項  司法書士は、第1項に規定する業務であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。