遺産分割協議は、財産に関する重要な法律行為の一つですから、未成年者自らが遺産分割協議に参加することはできません(民法824条)。そこで、遺産分割協議をする際、相続人の中に未成年者がいる場合には、親権者(父母)が未成年者の代わりに遺産分割協議に参加するのが原則です。

しかし、その親権者も未成年者とともに相続人である場合、親と子との間で利益が相反することになります。たとえば、夫婦と子供が2人の4人家族で夫が死亡したとします。この場合の相続人は妻および2人の子の合計3人なので、この3人で遺産分割協議を行うことになります。

しかし、子が未成年だったとすると、その子の親権者は母一人です。この状態で、親権者が子の代わりに遺産分割協議に参加するとなれば、相続人3人の遺産分割の内容を母1人で自由に決めてしまえることになります。全ての母親が子の利益のために行動するとは限りません。

そこで、このように未成年者とその親権者との間で利益が相反するときには、家庭裁判所でその未成年者のために特別代理人を選任してもらわなければなりません。そして、未成年者の特別代理人が、遺産分割協議に参加するのです(民法826条)。

なお、特別代理人に選任される人の資格についてはとくに制限は無く、特別代理人選任の申立をする親権者が推薦した人が選ばれるのが通常です。そのため、無報酬で特別代理人になってもらえる人として、未成年者の祖父母や、伯父(叔父)、伯母(叔母)を推薦することが多いと思われます。

これでは、結局は親権者の意向がそのまま反映した遺産分割協議内容になってしまうとの批判もありますが、現行の制度では仕方ありません。

参考条文

民法 第824条(財産の管理及び代表)
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

民法 第826条(利益相反行為)
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

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